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「衝動」に支配される世界ー我慢しない消費者が社会を食いつくす

ポール・ロバーツ/神保 哲生 解説 (著)

人も企業も なぜ自分の利益しか考えなくなってしまったのか?

この社会全体が効率的市場の価値観に支配され コミュニティや文化は崩壊し 自己利益を追求する個人(消費者だけでなく企業も政治も)の集まりになってしまった。
企業は四半期利益や株価を維持するために研究開発や従業員教育など長期的な投資を抑制し 簡単に従業員をレイオフするようになった。
個人は 生産者・顧客から消費者となり 「社会の一員」から個人の満足だけを追い求める存在に変わった。

医療の世界では 患者の「最先端の治療を受けたい」という欲求を満たすため そして高度な治療に投資した医療機関が元を取るために保険制度に何億ドルもの不要な負担をかけて治療が行われている。2000年代初頭の住宅バブルでは 投機家だけでなく素人同然の人々までもが驚くほど簡単に組めるローンを使って投機に手を染めた。まさにインパルス・ソサエティの行き着く先といえる。

また 政治さえも有権者の感情を煽り 自らブランド化することで選択肢を単純化し 得票数に結びつけようとしている一方で 長期的な問題を解決する能力が失われてしまっている。
それだけではなく インパルス・ソサエティは たとえばボランティアや 外食をやめて家で子どもに料理を教える 子どもにゲーム機を与えず一緒に遊ぶといった 目に見えない富を生む活動を GDPを増やすことはないという理由で 非効率として排除してしまうのだ。

しかし もはやGDPが伸びても社会全体が潤うどころか むしろ社会は落ち込むことが証明されている。もはや利益は共有されるものではなく 奪い合うものになってしまったからだ。
本書は インパルス・ソサエティがもたらす弊害を検証し 社会が持続不可能であることを証明すると同時に 持続可能な社会を取り戻すための方法を探る。

単行本: 376ページ
出版社: ダイヤモンド社 (2015/3/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 447802930X
ISBN-13: 978-4478029305
発売日: 2015/3/20